医療×ブロックチェーン、代表的な応用方法

ビットコインをはじめとした暗号資産で注目されたブロックチェーン技術は、様々な産業でデジタルトランスフォーメーションなどの文脈で企業利用も進んでいます。
企業によるブロックチェーンの利用の多くは、コンソーシアムブロックチェーンあるいはプライベートブロックチェーンと呼ばれるもので、暗号資産で用いられる多くのブロックチェーンとは少し異なります。
ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンでは、誰でもブロックチェーンにアクセスでき、条件さえ満たせばブロック生成にも参加できるパーミションレス型のネットワークであることが特徴ですが、企業が利用するブロックチェーンの多くはパーミション型であり特定の企業グループのみがノードを管理してネットワークを形成しています。
企業によるブロックチェーン利用の肝は、特定の企業グループが分散ネットワークを共有して、リアルタイムにワークフローを共有して業務効率化したり、企業間の情報共有コストを削減する点にあります。
ブロックチェーンの利用は様々な業界に及んでいますが、本コラムでは医療業界におけるブロックチェーンの利用を概観します。
その中でも代表的な応用方法のいくつかを紹介します。
医薬品の真贋証明
医薬品のサプライチェーン管理はブロックチェーンが製薬やヘルスケアの分野で利用される最も主要なユースケースの一つでしょう。
WHO発表によると、偽造医薬品は世界的に増大しており、その流通量は750億ドルになっているとされます。特に偽造医薬品が流通する地域は途上国で、流通する医薬品の最大30%が偽物であることが試算されています。
(参照 : https://www.who.int/bulletin/volumes/88/4/10-020410/en/)
主要な医薬品はアメリカとヨーロッパ企業にものが多く、つまり途上国ではそれら先進国企業の偽物が流通していることになります。
偽造医薬品を製造販売することは、治療効果が得られないばかりでなく、予期せぬ副作用により身体障害や死に至るといったリスクをもたらします。
また、同時に不正品が出回ることは正規品の販売高を奪うことになりますので、製薬企業の売上も毀損しています。
これを解決する手段として医薬品にブロックチェーンでトレーサビリティを与えるソリューションが注目されています。この方法では、パッケージなどに一意のコードが記録され、それを読み取ったとき、確かに製薬企業が保持する秘密鍵で出荷したことを示す電子署名がなされた記録がブロックチェーン上で確認出来ることが想定されます。
実際の事例としては例えば、製薬会社大手Pfizer、医薬品卸大手McKessonらが共同開発しているMediLedgerなどが挙げられます。
他、製薬・ヘルスケア業界で様々なブロックチェーン利用を検討するコンソーシアムとしてPharmaLedgerが立ち上がっており、同コンソーシアムは参加企業の規模としては2021年時点で製薬・ヘルスケア業界で最大規模の企業グループによる取り組みとなります。
ヘルスデータやカルテの相互運用性担保
ヘルスデータもブロックチェーンと相性の良い分野の一つです。例えば、病院のカルテに関しては各病院ごとに異なるフォーマットで個別に管理されており、サイロ化しています。
ある病院での診療情報は他の病院で共有されず、引っ越しや何かの都合で新しい病院に行く際は、これまでの病歴などを紙で書く必要があります。
これが患者の許可を得た上で、ブロックチェーンで複数の病院でシームレスな情報共有がなされれば、毎回情報共有する手間が省けます。
また、情報共有がなされれば、必要のない初期診療も削減出来る可能性があります。これは患者視点でも、医療従事者が足りない傾向の社会背景を持つ各国にとっても望ましいと言えます。
ブロックチェーンと分散データベースと暗号技術を組み合わせることで、医療データを単一のデータベースに集権的に管理することなく、各個人が管理をし、所定の医療機関で使用することが可能です。
医師の診察情報をシームレスに薬局に伝えることにも有用であり、これについてはAlibaba系金融会社のAntfinancialが中国の各省で取り組みを行っています。
(参照:https://www.ledgerinsights.com/ant-alipay-drug-prescription-blockchain/)
このケースでは複数の診察所で情報を共有していますが、このような複数のエンティティが情報を共有するネットワークこそがブロックチェーンの利用方法です。
まとめ
本コラムでは、医療分野におけるブロックチェーンの代表的な応用方法の紹介しました。ブロックチェーンの産業利用は徐々に当たり前になり、私たちの生活の中に溶け込むようになるでしょう。
そしてそのときにはブロックチェーンという言葉など意識することもなく我々の生活や仕事の業務を便利にしているはずです。
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執筆者
Liquid編集部
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