新年あけましておめでとうございます。
新たな一年の始まりに際し、今年の展望を考えるに当たり、仮想通貨市場とその他の金融市場との繋がりの実態について考えてみたいと思います。
CoinMarketCapによると、本レポートの執筆時点で2,083種類の仮想通貨が存在していますが、ほとんどの仮想通貨の市場規模は小さく、ビットコイン単体の市場規模が仮想通貨市場全体に占める割合が50%を超える日が多く発生してきました。
つまり、今日に至るまでビットコイン一強の時代が長らく続いてきました。
そのビットコインですが、以前は金融資産としての位置付けが明確になく、金融市場の動向にかかわらず独自の価格の動きが多かったことに対し、最近では株式市場などの他の市場の動きに影響を受けることが増えてきたと考えられます。
昨年は1月1日に$13,901だったビットコインの価格ですが、月末には国内の仮想通貨交換所におけるハッキング事件が発生し、上下運動を繰り返しながら徐々に値を下げました。9月には国内の別の仮想通貨交換所におけるハッキング事件が発生し、12月には一時$3,200前後まで下げ、約$3,796にて年末の取引を終えました。
その中で、例えば昨年の11月中旬頃の、仮想通貨市場全体が大きく下げた時期を振り返って見ましょう。CoinMarketCapによると、11月13日から14日にかけて$6,300から$6,400のレンジで推移していたビットコインの価格は、現地時間15日に発生したビットコインキャッシュのハードフォークと相俟って下落を開始し、15日夜には一時的に$5,500をきるまでに下落、その後は19日まで足踏みを続けた後に再度下落を開始し、11月27日には$3,700台まで下げました。
一方、TradingViewによると、日経平均は10月1日に2万4,604円を記録した後、10月26日には2万885円まで下げたもののその後盛り返し、ビットコインキャッシュのハードフォークが発生した11月15日の前後となる13日から16日にかけては、主に2万1,700円から2万1,900円のレンジを中心とした価格の変動が続きました。
このビットコインの価格と日経平均株価の推移から推論できるのは、ビットコインキャッシュのハードフォークが発生した11月15日前後の時点に於いて、およそ$800から$900下落したビットコインの価格と、狭いレンジを行き来していた日経平均株価の変動に直接的な関係性は見られないと思われる点です。
ところが、19日になると日経平均株価は大きく下落し始め、翌20日には2万1,200円近くまで下げました。ビットコインの価格もまた、19日には$5,600程だったものが翌20日にかけて$4,464にまで下げたため、15日前後とは異なり、19日から20日にかけての日経平均株価とビットコインの価格の変化は連動していました。
20日を過ぎると、多少の足踏み期間を経た上で更に値を下げていくビットコインに対し、日経平均株価は12月2日につけた2万2,796円に向けて大きく反転するなど凡そ正反対の方向へ価格が変動していきました。
このように見て行くと、ビットコインキャッシュのハードフォーク前後を起点にビットコインの価格と日経平均株価は
連動なし→同じ方向に連動→正反対の方向に変動・・・
と、必ずしも規則性が無いように見受けられます。むしろ、この時期のビットコインの価格は、11月12日に1ドル114円まで円安が進行し、その後19日にかけて1ドル112円まで円高ドル安が進行していた日本円/米ドルの為替レートに少し遅れる形で動いている様にも見受けられます。
その上で、2019年の政治や経済の動向に目を向けますと、1月は年初より円高ドル安が進行し株安となっている他、3月には英国のEUからの離脱、5月には新天皇の即位に伴う新しい元号の制定、7月には参院選が実施され、10月には中華人民共和国が建国70周年を迎えます。また、同じく10月に国内では消費税の引き上げが予定されています。
通年でも、米中貿易摩擦の長期化や中国経済の鈍化、米国での利上げの打ち止めの可能性や世界経済の減速懸念などが予想されます。
この様な流れの中で、仮想通貨に多少なりとも株や為替などの他の金融市場との価格の関連性が認められるということは、仮想通貨が少しずつ、金融資産としての立ち位置を得つつあることの証であると言えます。仮想通貨は金融商品取引法の適用を受けておらず、当該法の観点から正式な金融商品として認知されていない点には注意が必要となりますが、市況面に於いて仮想通貨が金融資産としての立ち位置を少しずつ確立していく流れは2019年も継続し、より確かなものとなっていくでしょう。
また、リーマンショック後に各国の金融政策の実施によって立ち直ってきた世界経済が過度期を迎える中で、2019年は仮想通貨がその真価を問われる年ともなるでしょう。
2019年が皆様にとって素晴らしい年であることをお祈りいたします。
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