【Quoine Crypto Industry Report】仮想通貨特有のリスクにはどの様なものがあるのか?
Crypto Researcher at QUOINE Corporation
Ryoko Imoto
従来の金融機関であれば市場リスクや流動性リスク、オペレーショナルリスクなどを計量化するのが常と言えますが、数年前はフィンテックのくくりで取り扱われていた仮想通貨の取引所が急激に金融機関化する中に於いて、仮想通貨特有のリスクをモニタリングする事は中期的には至上命題と言えます。このレポートでは、仮想通貨特有のリスクにどの様なものがあるのか、その一端を考察したいと思います。
もちろん、仮想通貨が取引所などの市場で交換されている状況にあっては、市場リスクなどの従来のリスクの枠組みが当てはまる事は議論の余地がない事と思われます。しかしそれ以外にも、非中央集権ならではの問題がそこにあると言えます。
そこで仮にも、仮想通貨特有のリスクを”非中央集権リスク”と本レポートでは呼ぶ事とします。
まず始めに考えられるのは、ネットワーク攻撃でしょう。ネットワーク攻撃と言えば51%アタックなどが有名かもしれません。何れにしても、ブロックチェーン上で資金を不当に得ようと考える人々によってそのブロックチェーンネットワークの運営主権が実質的且つシステム的にその主体へと委譲される事を可能とするのがネットワーク攻撃です。これは通常、ハッシュレートと呼ばれるネットワークの活動値が相対的に低いにも拘らず、それに呼応する仮想通貨が市場で高値で取引されている通貨が狙われやすいとされています。つまり、システム面のある種の評価指標と金融市場面での金額という評価指標の乖離を狙った攻撃と言えます。
それ以外にも、コンセンサスアルゴリズムが十分に働かず、承認されたと思っていた取引の正当性が後ほど覆される可能性もあります。他にもシステムにバグが紛れ込んでいてネットワークの運営に支障を来す事もあるでしょう。取引量が大幅に増加すれば、コンセンサスアルゴリズムが処理できる以上の取引が流入する事となり、ブロックチェーン上で取引を処理したいタイミングで処理を行うことが出来ないという、一種の資金処理リスクの様なものも存在します。
また、昨年のビットコインキャッシュのハッシュ戦争に見られる様に、ハードフォークが乱立したり大きな政治的・技術的対立を孕んだ際にはその仮想通貨の価格が大きな影響を受け、価値が低下する事は必至です。その意味ではハードフォークにまつわる政治対立もまた一種のリスクとなるでしょう。
それに加え、非中央集権型のプロジェクトであっても世間から信認の厚い任意の開発団体等は存在します。その為、例えばイーサリアムクラシックの開発団体が資金難により解散した際は、少なくとも同じタイミングで価格は下落していました。つまり、いわゆるデフォルトを引き起こすほどの信用リスクではなかったとしても、何かしら非中央集権型トークンにまつわる非中央集権的信用リスクの様なものが存在している可能性があります。それに加え、この資金難は仮想通貨市場全体の下落によって引き起こされたと報道されていますので、これが事実であれば仮想通貨市場と非中央集的に開発の進められているトークンとの間にも一種の連鎖リスクの様なものが存在していると考えられます。
この様に、仮想通貨のリスク管理を考える上では従来の金融の枠組みに加え、その特徴である非集権性にまつわるいろんな要素を上乗せしていく必要があるのではないかと考えられます。
このレポートのご質問、ご意見、ご感想は、cryptoresearch@quoine.com までお気軽にお寄せください。
【免責事項】
このレポートは、このトピックに関するリサーチャー個人の意見及び見解を反映したものであり、QUOINE株式会社としての見解を表明するものではありませんので予めご了承下さい。また本レポートは特定の仮想通貨の売買を推奨することを目的としておらず、不正確な情報を含んでいる可能性がある旨をご留意ください。また、その仮想通貨の抱えるリスクを個別具体的及び包括的に網羅し解説しておりませんので予めご了承下さい。本レポートを投資判断の参考の一つとして使用される際は、あくまでお客様ご自身のご判断とご責任によりご使用くださるようお願いいたします。
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執筆者
Liquid
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