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ビットコインの時代(1) ~現状と貨幣論~

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私はいまを「ビットコインの時代」だと捉えている。より正確に言うならその時代の初期。ビットコインが通貨の新たな形態を提示して、それに派生してさまざまな暗号資産が現れた時代のことだ。暗号資産のなかにはビットコインのようにお金のようなものもあれば、お金と「気持ち」の間のようなトークンもある。これから全4回にわたって、それらが織りなす「ビットコインの時代」について語ってみたいと思う。

 

まず今回はビットコインの現状を、貨幣論に絡めながら概観したい。次回以降はビットコインの意義や背景、そして「お金のようでお金でない」トークン、さらには「さまざまなものがお金のようになる」時代について扱うつもりだ。

 

 

いまビットコインを語ること

ビットコインについて語ることが、どうにも難しくなったように思う。注目している人とそうでない人で、あまりに事態の認識が異なっているからだ。どちらの人が優れているとか、善いとかいうわけではない。優劣でもなく善悪でもなく、ただあまりに両者は異なっている。だからここではどちらかを対象にして何かを語るよりも、ただその差異を埋めることを目指してみたい。それはビットコインの「いま」を語ることになるだろう。

 

日本でビットコインが社会現象となったのは2017年である。この年の12月に価格は1 BTC=240万円を超し、大きく儲けた人を指す「億り人」なる言葉が生まれた。だが年が明けて18年1月には大手取引所がハッキングされ、世論は暗号資産にひどく冷淡になった。この時期にビットコインをはじめ暗号資産の価格は軒並み下落して、バブルは崩壊したとされる。

 

おそらくここまでのことは、ニュースを追う習慣がある人ならおおむね知っているだろう。そしてそれ以後のことは、暗号資産に関心がない人は、ほとんど知らないと思う。テレビや新聞にはそれを伝える力が乏しいし、ネット上の専門メディアに目を向けるのは元々関心がある人ばかりだろうから。だから巷間にはいまも「ビットコインは怪しいのではないか」とか「そんなものに価値はあるのか」といったネガティブな意見が残っている。

 

 

ブーム後の成長

しかしである。19年の様子をざっと見てみよう。この年の春先からビットコインの価格は回復しており、8月は1 BTC=100~130万円あたりまで上昇している。実は17年から18年にかけての絶頂期でも、1 BTC=130万円を超していたのは年またぎの2カ月ほどにすぎない。つまりこの19年8月の価格は、歴史のなかでもかなり高いものである。かつての「暗号資産ブーム」が終わったなかで、ここまで達しているのだ。

 

また、トルコやベネズエラのように、政情が不安定な国では「法定通貨への不信が高まると、ビットコインに資産を移す」動きが確立しつつある。こういう「お約束の動き」が確立するのは資産としては重要なことで、金が強い要因のひとつに「景気が悪くなると金に資産を移す」というお約束の動きが挙げられる。

 

いまやビットコインの時価総額約20兆円は、世界のベースマネーのなかでもトップ10に入るし、これは銀の時価総額のおよそ4分の1に至る。すでに人類有数の資産なのだ。また、アメリカのヴァージニア州で、私的年金の運用に暗号資産を組み入れる動きが始まっていることも付記しておきたい(”First U.S. Pension Funds Take the Plunge on Crypto Investing” by Alastair Marsh, Bloomberg, 2019年2月12日)。

 

こうした事実を見ると、「ビットコインは怪しいのではないか」や「そんなものに価値はあるのか」といった問い方が、いささか的外れであることが分かるだろう。「自分は怪しく感じるが、なぜこんなに世の中で求められているのか」や「どんな価値があるのか」と考えるほうが、よほど建設的である。

 

 

通貨の役割

ここで貨幣論に目を向けてみよう。そもそも通貨の役割とは何なのか。この問いに最も教科書的に答えるなら、それは「交換の媒介」(medium of exchange)である。モノとモノを直接交換するよりも、通貨を媒介させるほうがずっと便利だ。米をほしい漁師は、魚をほしがる農家を探し当てる必要はない。魚を誰かほしい人に売って、そのお金で米を買えばよいだけだ。

 

通貨の役割として、もうひとつよく挙げられるのは「価値の保存」(store of value)である。魚は腐るが、通貨は腐らない。通貨があるから、漁師は大漁のときは魚を通貨に替えて、その価値を後々まで保存できる。

 

これはよく見過ごされることだが、「交換の媒介」は「価値の保存」を含んでいる。たとえば漁師が魚を通貨に換えて、その通貨を米に換えるまでにはタイムラグがある。そのタイムラグのあいだ、通貨は価値を保存できていなければならない。

 

しかも通貨が今日の交換に使えるのは、相手が「明日も交換に使える」と予想しているからだ。その予想が成立するためには「明後日も交換に使える」との予想が成立していなければならない。その更なるタイムラグにおいても、通貨は価値を保存できていなければならない。つまり、ずっとだ。

 

逆の関係はどうかというと、「価値の保存」ができるからといって、「交換の媒介」であるとはかぎらない。たとえば現代において、金(ゴールド)は「価値の保存」はできるが、「交換の媒介」ではない。しかし金は通貨と交換できることで、価値を保存できる。

 

 

現状は「価値の保存」の手段

ビットコインに話を戻そう。現状ではビットコインが利用できる店舗はかぎられており、「交換の媒介」にまではなっていない。だから、これをもって「ビットコインは通貨ではない」と難じる向きは多い。しかし先述のとおり、ビットコインは「交換の媒介」たる通貨と交換ができ、すでに人類有数の規模の資産になっている。

 

おそらくビットコインを「怪しい」と感じる人は、政府が発行する法定通貨ではないという理由が大きいのだろう。しかし、政府が発行するものではないからこそ、政情に関係なく価値が保存できる。そして人間は「価値の保存」の手段がないと、財産はすべて「腐るもの」になってしまい、生存が脅かされてしまう。

 

ビットコインはひとまず「価値の保存」としての居場所を人類社会に獲得した。今後「交換の媒介」にまで成長するかは分からないが、その可能性をいたずらに否定するのは賢明でないだろう。なんせそれは世に登場してから10年ほどで、人類有数の資産にまで成長するという離れ業をやってのけているのだ。

 

ビットコインを発明したのは、いまも正体不明の人物サトシ・ナカモト。彼は何を考えてこのような分散管理の通貨を創りあげたのか。ビットコインの前史には何があるのか。次回はそれらについて論じていきたい。理解の手がかりとなるのは、最近の香港の大規模デモにおいて、参加者たちが駅で列をなして切符を買う一枚の写真である。

 

 

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執筆者

坂井 豊貴

慶應義塾大学経済学部教授、(株)デューデリ&ディール・チーフエコノミスト。ロチェスター大学Ph.D.(経済学)。著書に『多数決を疑う』(岩波新書、高校教科書に掲載)、『マーケットデザイン』(ちくま新書)、『暗号通貨vs. 国家』(SB新書)ほか。現在、東京経済研究センター理事(財産管理運用担当)を併任。Twitter: @toyotaka_sakai

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