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ビットコインの時代(3) ~お金の概念の溶解~

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謎の人物サトシ・ナカモトが2009年に公開したビットコインは、わずか10年で人々の「お金」の固定観念を大きく変えた。お金は物理的実体をもつ必要はない、国家が発行する必要はないといったことは、その例だ。しかし私は、ビットコインが本当に画期的なのは、それがこれから「お金」の概念を溶解させる(部分的には既にさせた)ことではないかと考えている。

 

 

ステーブルコインの発想へ

サトシ・ナカモトが2009年にビットコインを世に送りだして以降、さまざまな暗号資産が世に登場してきた。そのなかの一つにテザー(USDT)がある。

 

ビットコインは通常の法定通貨と同じように、人々の「明日もそれは価値をもつ」との予想が、今日のその価値を支えている。そして人々の予想は日々ふらつくので、円やドル建てでのビットコインの価値には変動がある。あまりに変動の幅が大きいと、法定通貨が強い現在の世のなかでは使いにくい。しかしテザーは、1 USDTが1ドルと交換できることがテザー社により保証されている(これを、ドルにペッグされているという)。だから取引所ではテザーはほぼ1 USDT=1 USDと、相場は安定している。テザーがステーブルコイン(安定コイン)と呼ばれるゆえんである。

 

テザーは金本位制の通貨を想起させる。たとえば明治時代の日本だと、1897年の貨幣法は1円と金0.75gとの交換を保障していた。円が金にペッグされていたわけだ。物質による価値の裏付けがある金本位制の通貨と比べると、それがないドルにペッグさせるテザーというのは、発想にそれなりの跳躍がある。また、作りたければだが、テザーにペッグした暗号資産というのも作れるだろう。

 

 

コインからセキュリティ・トークンへ

物質的な価値の裏付けがある暗号資産だってもちろん作れる。たとえば現在の資産価値が100億円のビル。100億円の物件を売買するのは個人レベルではまず不可能だ。しかしこの物件にペッグしたコインを100億枚作ったら、1枚の価値は1円ほどになる。これなら個人でもそれなりの枚数を保有でき、その物件を部分的にもつのと同じようになれる。そのようなコインをセキュリティ・トークン(security token)という。ちなみに最近フェイスブック社が発表した暗号資産リブラは、ドルやユーロや円を始めとする様々な通貨の組み合わせにペッグしたステーブルコインである。

 

コインとしてセキュリティ・トークンを見ると、これは新しい発想に基づくコインである。しかしよく考えてみると、それは不動産の証券化と同じようなものではないだろうか。これは確かにその通りで、日本では最近、セキュリティ・トークンは法的に第一項有価証券として整理される方針となった(よってその仲介には第一種金融商品取引業の免許が必要)。

 

しかし、セキュリティ・トークンは証券なのだろうか。本稿ではビットコインからテザーに話が及んで、コインをペッグさせるなら金やドルでなく不動産でもよいではないかと話を進めていったら、セキュリティ・トークンとなったわけだ。お金と証券の境界は、曖昧というよりは、溶解したように思えてこないだろうか。

 

セキュリティ・トークンの画期性は、安価に発行できるところだ。紙だと100億枚の証券を発行するのに、100億円以上はかかってしまうだろう。しかしブロックチェーン技術は比較的安価に電子的なコイン(証券)を発行できる。だから現実的に発行しやすい。ときどき「ブロックチェーン技術でないと出来ないことはあるのか(そんなものは無いだろう)」といった問いを見かけるが、これはスジが悪い問い方である。「ブロックチェーン技術は何を安価に可能とするのか」と問うべきなのだ。ブロックチェーン技術は、お金や、お金のようなものを安価に発行できる。そもそもビットコインからして、大きな組織には一切頼らず、サトシ・ナカモトがリリースしたものなのだ。

 

 

お金のようでお金ではないコミュニティ・トークン

それからもうひとつ、お金のようでお金ではないコミュニティ・トークンがある。たとえば記事の投稿メディアALISでは、読者は優れた記事の書き手にALISトークンを投げ銭できる。トークンの投げ銭は、「優れた記事にお金を払う」というのとは趣が異なる。トークンにはお金ほどの生々しさがなく、「いいね」と「お金」のあいだくらいの存在なのだ。そこには、あえてお金という生々しいものを人間関係に介在させず、金銭取引ではないが気持ちだけでもない、緩いつながりを発生させる意図があるように見受けられる。

 

おそらくそのようなコミュニティ・トークンは、ボランティアを促すような働きがあるだろう。ボランティアをする人のなかには、お金をもらいたくないという人が結構多い。金銭取引ではなく、自発的な人助けをしたいからだ。だが、ボランティアに感謝の印としてトークンを渡しても、お金を渡すような取引的な意味は生じないだろう。トークンに善き意味をもたせられるならば、トークンの導入はボランティアを活発化できるかもしれない。トークンはコミュニティ内で何か使用できた方がよい。ドラッグストアが発行したポイントで、そのドラッグストアの商品が買えるようにだ。

 

 

以上をまとめると、セキュリティ・トークンはお金と証券、またはお金と所有権の境界を溶解させるし、コミュニティ・トークンは「いいね」とお金の狭間を埋めていく。そうしてお金の概念の境界が融けてゆく。この連載タイトルの「ビットコインの時代」とは、そのようにお金の概念が変わる時代のことを意図している。

 

今回は多様なお金のありようについて述べたが、最終回となる次回は、多様なお金のめぐり方について考えていきたい。お金そのものも発明だが、お金がめぐる仕組みも発明の産物であって、そのような発明が立て続けに起こる時代をいま我われは生きている。

 

 

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執筆者

坂井 豊貴

慶應義塾大学経済学部教授、(株)デューデリ&ディール・チーフエコノミスト。ロチェスター大学Ph.D.(経済学)。著書に『多数決を疑う』(岩波新書、高校教科書に掲載)、『マーケットデザイン』(ちくま新書)、『暗号通貨vs. 国家』(SB新書)ほか。現在、東京経済研究センター理事(財産管理運用担当)を併任。Twitter: @toyotaka_sakai

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