仮想通貨市場で見る新型コロナウイルス不況と経済政策の関係

皆さんこんにちは。株式会社クリプタクトの斎藤です。
前回「仮想通貨市場で見るコロナウイルスと不況の関係」(記事はこちら)というタイトルにて、コロナ不況や不況の本質を考えながら、そこからくる仮想通貨市場への影響を考察しました。
その後、ご存知の通り、世界中で巨大な経済政策が打たれようとしています。
今回はそれらの経済政策が暗号資産(仮想通貨)に与える影響について簡単ではありますが考えてみたいと思います。
コロナ不況と経済政策
コロナウイルスの脅威の中各国政府は経済活動を停止し、感染拡大の阻止に注力する政策を取っています。
一方で、経済活動を停止すると当然ながら不況に陥るわけですが、最悪の場合はそれがキッカケとなり債務危機が生じる可能性があります。
この債務危機が訪れると、金融機関や企業の連鎖倒産を招く危険性があり、経済活動を停止しながら、いかにこの債務危機の到来を食い止めるか、あるいは先延ばしにできるか、が経済運営の重要な点となります。
そのため不況を和らげ少しでも債務危機の可能性を後退させるために、各国政府は巨大な予算をつかって財政拡大、経済政策を打ち出そうとしています。コロナウイルスの終息の時期がわからない以上、どの程度の予算を確保すれば十分なのか誰にもわかりませんが、リーマンショック時以上の予算を投じて、個人・企業の収入減に対処しようとしています。
米国では2兆ドルの支援策が可決され、日本においてもリーマンショック時の56兆円を超える規模と案内されています。それに呼応するかのように、金融政策においてもFRBが国債や住宅債権の購入を無制限にすると発表し、クレジット市場の緊張緩和を行い、財政拡大のサポートを行っております。
暗号資産と経済政策
これらの大胆な経済政策をうけて、株式市場のみならず仮想通貨市場も大きく上昇しました。
債務危機回避に向けた動きの好感もありますが、財政拡大に伴う通貨供給が意識され、いわゆる資産価格の上昇を招いていることも要因でしょう。特に暗号資産はデジタルゴールド、つまり金のような意識のされ方からドル建価格の上昇を期待した動きになっていると思います。
足元、株式市場と同じく仮想通貨市場も落ち着きを取り戻しつつあります。そこで、経済政策を軸に仮想通貨市場について考察してみたいと思います。
今回行う経済政策は、全額ではないにせよおそらく国債発行、つまり国の借金によって賄われると想定されます。中長期的にはそれらの借金で行う経済効果以上の見返り、それは経済活動活発化による税収増などによって返済されていくことが基本となりますが、別の選択肢としては借金を借金で返済する、つまり国債の借り換えを行い続けるという道もあり得ます。
こういった経済政策の後の資金源の回収といった視点で物事を考えると、中長期的な話となりますが、いずれにしても仮想通貨市場には好感視される可能性はあると思います。
1つ目の税収増について。
もちろん自然体でこの経済政策によって税収が増えていくのであれば問題ないのですが、今回の経済政策はそもそも政策によって経済停止した分の補填にすぎないため、それによって税収がこれまでと比べて増えていくということは現時点では予想しづらい面があります。
コロナウイルスが早期(2-3か月)に終息すれば、この予算を投下したタイミングで大きな好景気を招く可能性は否定できないところでありますが、コロナウイルスの終息が秋以降になるような場合は、税収増になるような効果までは期待しづらいと考えらえます。
そのため、経済政策の「ツケ」の話になると、今後増税あるいは各種社会保障のカットになる可能性があります。
これらはあくまで可能性の話ですが、これだけ大規模な経済政策の結果としての増税の議論が始まると、所得税や消費税といった収入や支出の際に支払う税金だけでなく、何らかの資産課税のようなものに波及する可能性も意識されやすいと考えられ、暗号資産という補足しにくいアセットクラスは注目されてくるシナリオが考えられます。
絶対に追えないということではないものの、預金封鎖されても自分のウォレットにある暗号資産は事実上封鎖されないといえるでしょう。
特に重要な点は、これは日本だけの話ではなく先進国全般に言えることでもあり、いずれかの国でこういった動きがあるだけで、仮想通貨市場で意識されやすい環境(実態がどうであれ)になることです。
2つ目の借金を借金で返済するシナリオについても、さらなる財政拡大が意識されて、今回の刺激策発表後に起きた暗号資産の上昇のようにポジティブ視されやすいと想定されます。
これもまた、世界中の先進国全般に言えることでもある点が大きいと思います。
なお、個人的にはさらに長期的な視点で考えると、暗号資産はとても面白い岐路に位置しているかもしれないと思っています。
ある国の財政破綻はその国の大幅な通貨安を招き、ハイパーインフレのリスクが生じてしまいます。それがあるからこそ、各国とも野放図な財政拡大には本来は慎重となります。しかし、今回のケースでは先進国通貨の全てで大胆な財政拡大が行われる可能性があり、そうなるとある特定の通貨安には結果的にならない、という皮肉な現象が起きる可能性があると思います。
このような、本来ある通貨間での相互監視的な機能が崩壊しつつ環境において、ひょっとすると暗号資産、特にビットコインは先進国のフィアットマネーの監視的な立ち位置を確立する可能性もあります。
資産課税やさらなる財政拡大において、よりビットコインに逃避する流れが結果的に野放図な財政拡大のストッパーにもなり得るため、これは今後注目すべきことかと考えています。
そういったリスクを見据えて、各国がハードアセット(金、貴金属、コモディティなど)の購入の開始、あるいは加速といった事もあり得ますが、ビットコインへの逃避が続くのであれば、ハードアセットの中の一部をビットコインが占める、なんて世界があり得るかもしれません。
最後は完全な妄想となりました。
表現として不謹慎かもしれませんが、現在の財政拡大だけみると興味深い状況にあると言えると思います。
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2018年1月設立。創業メンバーの3人はゴールドマン・サックスにて、ヘッジファンドの運用や金融システムの開発を経験。2019年10月にはジャフコ、マネーフォワードなどから計3.3億円の調達を実施。
※本記事はコインタックス株式会社の監修を受けています。
パートナー税理士法人と暗号資産(仮想通貨)投資を行う上で、ハードルとなる税務周りの問題の解決を主に行っている。確定申告サポートから、税務調査や暗号資産の相続に至るまで幅広いサービスを提供。
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執筆者
斎藤 岳
株式会社クリプタクト代表取締役 Co-CEO。新卒でゴールドマン・サックスに入社してから計12年間、株、債券、為替など流動性のある資産から、不良債権、船舶、不動産など、幅広く投資・運用を経験。クリプタクトは投資支援プラットフォームであるCryptactを運営。仮想通貨の自動損益計算サービスを皮切りに、投資において役立つITツール開発に注力。前職での投資経験を活かして、レポートやコラムも多数執筆。Twitter:@Cryptact_gaku