想像より簡単!?仮想通貨取引にかかる税金を解説 Vol.4

※本記事は2020年2月に公開した内容に新たな情報を追記・編集したものになります。
仮想通貨の確定申告、小ネタ集
第3回(記事はこちら)までに仮想通貨の損益計算の必要性と、外部サービスなどで損益計算した後にどのようにして確定申告を行うのかをご説明しました。
第4回となるこのブログで最後となるのですが、仮想通貨にまつわる確定申告について小ネタを集めてみました。といっても、結構参考になったりするものもあるので是非ご一読下さい。
仮想通貨の税務調査って実際どうやってくるの?
きっかけの詳細はわからないのですが、税理士さんと話していると、税務署は入金や引き出しなどの情報を金融機関から収取し、入出金が多額になっている方が狙われている印象があるようです。仮想通貨取引所から多額の振り込みがあって確定申告していなければ、それはかなり怪しく見えるようです。
他にも、とある仮想通貨をある販売店から取得した方ばかり税務調査に入っていることもあったようで、銀行や取引所を通さずに相対取引で現金化していたとしても、調査が入っていたようです。こういった事例ですと、この販売店に反面調査が入ったことがきっかけだったりすると考えられます。
ちなみに連絡手段としては、知らない固定電話から着信があり、出てみると税務署からの税務調査の事前連絡だったというケースが多いようです。他にも、郵便で書面が届くこともあるようです。
仮想通貨の確定申告の経験が豊富なコインタックスさんにリアルな税務調査の話を聞いているので、動画もぜひみてみてください。
仮想通貨の確定申告の(悲惨な)事例
マイニングなどをしていて放置していた結果多額の利益が知らないうちに発生していた、ということがあるようです。
マイニングは、マイニングした仮想通貨の量をその時点の時価で全額収入認識することになります。つまり、現金化していなくても勝手に収入としてどんどん認識されていく、ということになります。
この時の時価によっては多額の収入が発生している可能性があり、これを年度が替わるまでに現金化していないと、年明け3月の確定申告の時にとんでもない税金を払うことになります。もし、税金支払いの時点で仮想通貨の価格が下がっていると、現金化したとき以上の税金を支払うことになる可能性もあります。
年をまたぐと現金化したときに損失を出していても、マイニング収入にぶつけることができないので、必ず同一年内に(少なくとも税金支払いができる量は)現金化することをお勧めします。
年ごとに損益を計算することの落とし穴
悲惨な事例に関わってくるのですが、年ごとに損益計算して金額が確定することになるので、年をまたいだ利益と損失をぶつけることができません。
少し極端な例になりますが、例えば、2017年にビットコインが10万円のときに、100万円を使って、ビットコインを10枚購入したとします。2017年はビットコインが約10万円から200万円以上となったのですが、ここで2017年中にビットコイン価格が240万円になったときに、ビットコイン10枚をネム20万枚と交換したとしましょう。
このとき、あなたはビットコインとネムの交換で、2,300万円の利益( = 10 x (240 - 10)万円 )が発生しています。その後2018年に入り、3月の確定申告の時にあなたは納税のためにネムを売却しようとしますが、ネムはすでに価格が暴落しています。このときのネム20万枚の時価は700万円ほどにさがっていました。
2,300万円の利益に対して支払うべき納税額は、あなたの他の収入にもよりますが、仮に他の収入が0だった場合は、およそ500万円以上の納税が必要となり、他の所得がある場合はもっと増える可能性があります。つまり、保有している20万枚のネムをすべて売却しても、なんと納税後に200万円も残らないことになります。
ここで大きなポイントは、ネム20万枚を700万円で売却したときに、本来1,700万円の損失が発生しているのですが、この損失は2018年の損失となり、2017年にあなたが計上した2,300万円の利益と合算することができない、ということです。同じ年度であれば、利益と損失を合算して、例えば上記の例だと、結果600万円の利益となり、税金もそれに応じた金額(40万円前後)に収まります。
ところが、年をまたぐことで合算することができず、2,300万円の利益が確定してしまうのです。その後どれだけ仮想通貨が暴落しても関係ありません。ここがまさに年をまたぐことの落とし穴であり、年明け3月の確定申告の時に必要な税額はあらかじめ年が明ける12月までに換金しておくのがとても大切になります。
年末までならできた節税対策
年をまたぐことの落とし穴、について説明しましたが、逆にいえば年をまたがなければ、利益に対して損失をぶつけて合算することができる、つまり利益額を減少させて納税額を減らすことができる、ことを意味します。
これを行うためには、まず保有コインごとに税務上の簿価がいくらなのか正確に把握する必要があります。これは、クリプタクトのサービスでも容易に確認できるので、難しいことではありません。その上で、年末までに含み損となっているコイン(簿価より時価のほうが低いコイン)については、売却してしまうことで、この含み損を実現化してしまいましょう。そうすると、それまでの利益が実現化した損失分だけ減少することになります。
もちろん、そもそも利益が出ていないと含み損を実現化させたところであまり意味はないのですが、仮想通貨の取引は自分が思っていないところで利益が出ていたりするものです。一度損益計算サービス等で確認してみることをお勧めします。
以上、仮想通貨の確定申告について、最終回となる今回は様々な小ネタについてまとめてみました。またこれまで計4回お付き合い頂きありがとうございます。
次回はトピックを変えて、【仮想通貨や投資に関するあれこれ】について執筆したいと思います。
引き続きよろしくお願いします。
過去の記事はこちら
▼クリプタクトサービスはこちら
《会社概要》
株式会社クリプタクト
2018年1月設立。創業メンバーの3人はゴールドマン・サックスにて、ヘッジファンドの運用や金融システムの開発を経験。2019年10月にはジャフコ、マネーフォワードなどから計3.3億円の調達を実施。
※本記事はコインタックス株式会社の監修を受けています。
パートナー税理士法人と暗号資産(仮想通貨)投資を行う上で、ハードルとなる税務周りの問題の解決を主に行っている。確定申告サポートから、税務調査や暗号資産の相続に至るまで幅広いサービスを提供。
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
【免責事項・注意事項】
- 本ウェブサイトへの執筆者の記事掲載は、情報提供を目的としたものであり、ビットコインといった暗号資産を始めとするいかなる商品についても、その売買等の取引の勧誘・推奨を目的としたものではありません。
- 本ウェブサイトにおいて正確な情報を提供するよう努めておりますが、その正確性について保証するものではありません。
- 本ウェブサイト上にて提供される情報に基づいて、取引等の行為をなされる際には、自身の責任と判断の下で行ってください。
- 当該行為の結果、損害を被ったとしても、QUOINE株式会社及び執筆者は、一切その責任を負いません。
このブログを定期購読する
ブログを定期購読して、
最新情報をチェックしましょう。
執筆者
斎藤 岳
株式会社クリプタクト代表取締役 Co-CEO。新卒でゴールドマン・サックスに入社してから計12年間、株、債券、為替など流動性のある資産から、不良債権、船舶、不動産など、幅広く投資・運用を経験。クリプタクトは投資支援プラットフォームであるCryptactを運営。仮想通貨の自動損益計算サービスを皮切りに、投資において役立つITツール開発に注力。前職での投資経験を活かして、レポートやコラムも多数執筆。Twitter:@Cryptact_gaku