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Virtual Assetに関するFATF (Financial Action Task Force) 勧告とその影響

メインイメージ

2019年6月21日、金融活動作業部会(FATF)は、FATF勧告15に関する解釈ノートを採択し公表しました。これに先立ち、昨年10月、FATFは、同勧告15の変更及び定義の追加によってFATF勧告を改訂し、Virtual Asset(VA)及びVirtual Asset Service Provider(VASP)に対し同勧告を適用させることを明らかにしていましたが、今回の解釈ノートの採択によってその内容が確定したといえます。

 

FATF(Financial Action Task Force)とは

FATF(Financial Action Task Force)とは、マネロン・テロ資金対策(AML/CFT)の国際基準(FATF勧告)を策定し、その履行状況について相互審査を行う多国間の枠組みとして、1989年に設立された国際機関です。現在、G7を含む36カ国・地域と2地域機関がFATFに加盟しており、その他9つのFATF型地域体を加えると、FATF勧告は、実質的にみて、世界190以上の国・地域に適用されるともいわれています。FATFは、AML/CFTの国際基準となるFATF勧告を策定し、その遵守状況を加盟国間で相互審査を実施しています。なお、本年10月下旬から日本は相互審査を受ける予定となっています。

 

FATF勧告はAML/CFTのために必要な40項目の勧告で構成されています。

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そして、相互審査においては、FATFは各メンバー国・地域に対し、順次、他のメンバー国により構成される審査団を派遣して、審査対象国におけるAML/CFTの法制、監督・取締体制、マネロン犯罪の検挙状況など様々な観点から、FATF勧告の遵守状況について相互に審査を行います。なお、FATF勧告は国際条約ではないため法的な拘束力はないものの、審査結果によっては、ブラックリスト等による国名の公表、メンバーシップの一時停止やコルレス契約等の注意喚起などの制裁に加え、当該国の金融機関が国際金融システムから排除されるなどの甚大な不利益が生じるため、事実上の拘束力があるとされています。このため、各国はFATF勧告に基づき国内法を整備し(日本では犯罪収益移転防止法)、金融機関等の法令順守状況を監督しています。

 

 

VA及びVASPに関するFATF勧告等の改訂

昨年10月のFATF勧告の改訂においては、VA及びVASPの定義が追加されています。

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上記の定義によれば、資金決済法における仮想通貨/暗号資産は原則としてVAに該当すると考えられます。また、資金決済法における仮想通貨交換業者及び改正資金決済法において新たに暗号資産交換業者となるカストディ業者(他人のために暗号資産の管理を行うことを業とする者)もVASPの定義に含まれます。

 

そして、FATFは勧告15の改訂及び解釈ノートを通じて、VASPをAML/CFT目的で規制し、登録制又は免許制を導入し、FATF勧告で要請される関連措置を遵守させ、監督に服させることを各国に要請しています。詳細は紙幅の都合上割愛しますが、重要な点は以下のとおりです。

 

  • 各国は、VASPの活動又は運営から生じるマネロン、テロ資金供与のリスクを特定・評価し、これらのリスクを防止・低減させる手段をリスクベースで講じなければならず、VASPに対し、 これらのリスクを特定、評価し、低減させる手段を講じさせなければならない。

 

  • VASPは免許又は登録を受けなければならない(最低限、設立国において、そして、場合によって顧客にサービスが提供される法域や業務が行われる法域において)。

 

  • VASPは国内のAML/CFTにかかる要請の遵守及び監視に関する効果的な制度に服さなければならず、かかる監督又は監視は、自主規制団体ではなく、規制当局によってなされなければならない。

 

  • AML/CFTの要請を遵守できないVASP(並びにその取締役及び経営陣)に対して、実効性、バランス、抑止力を備えた制裁を実施しなければならない。

 

  • VASPは、顧客と取引関係を確立する際には、KYCを含む顧客管理措置(CDD)を行わなければならず、一見取引であっても、取引金額がUSD/EUR1,000以上の場合にはこれを行わなければならない。

 

  • 仕向VASPは、VAの移転に関し、正確な送付人情報及び受取人情報を取得及び保持し、当該情報を被仕向VASP又は金融機関(もしあれば)に、即時かつ安全に(直接又は間接的に)提出し、かつ、規制当局の求めに応じて提出しなければならない。被仕向VASPは、 VAの移転に関し、送付人情報及び正確な受取人情報を取得及び保持し、かつ、規制当局の求めに応じて提出しなければならない。(このような規制は「トラベルルール」と呼ばれている。)

 

このVA版トラベルルールによれば、仕向VASPは、顧客から依頼された被仕向VASPへのVA送付について、送付人情報と受取人情報を取得し、この情報を被仕向VASPへ直接又は間接的に伝達することが必要となります。また、被仕向VASPは、仕向VASPから伝達された情報と、自らが受取人である顧客から取得した情報とを照合する必要が生じます。一方、このルールはあくまで、顧客がVASP間でのVAの移転を依頼した場合にのみ適用されるので、①顧客がP2PでVAを送付する場合、②顧客が仕向VASPにVASP以外の者にVAを送付することを依頼する場合、③VASP以外の者から被仕向VASPの顧客にVAが送付される場合には適用されません。この適用関係を表にまとめると以下のとおりです。

 

【仕向VASPの場合】

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【被仕向VASPの場合】

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仮想通貨/暗号資産ビジネスへの影響

今後、各国は、勧告15の改訂及び解釈ノートに示された要請にしたがって、可及的速やかに、国内法を整備していくこととなります。各国はVASPにつき免許制又は登録制を導入することとなるため、これまではどの国の規制も受けずに取引を行っていた海外の仮想通貨/暗号資産取引所その他のVASPは、早晩、規制対応が必須となるでしょう。また、上記のとおり厳格なCDDが必須となるため、本人確認を行わずに取引を認めるビジネスモデルも難しくなっていくものと考えられます。

 

さらに、上記のトラベルルールの適用は、これまでの仮想通貨/暗号資産業界を大きく変貌させる可能性があります。まずは、どのような方法で、プライバシーに配慮しつつ、安全かつ迅速に送付人情報及び受取人情報をVASP間で共有するかについて、技術的な制約も踏まえて、民間でルール作りをし、規制当局とすり合わせることが求められます。なお、このような取組みの端緒として、6月28日及び29日に、FATFや日本を含む政府関係者も参加し、VASP及びシステムプロバイダー等が参加する民間主導の国際会議(V20)が大阪で開催されました。また、日本など免許制又は登録制を導入している国のVASPとしては、そのような制度がない国のVASPには顧客情報を送付することは難しいため、免許又は登録を受けていないVASPに対してVAを送付すること自体を行わないことが現実的な選択肢となる可能性があります。そうすると、VASP業界は、免許又は登録を受けて規制を遵守した形で業務を行うVASP間で構成される業界と、免許又は登録なしに業務を続けようとするVASP間で構成される業界に二分される可能性も否定できません。また、顧客が自ら管理するウォレットへのVAの送付、又はそのようなウォレットからのVAの受領については、トラベルルールの対象ではないことから、プライバシーをより重視する顧客においては、VASPを通さないP2PでのVAの移転が増加することも考えられます。

 

このように、FATF勧告の改訂は、世界的レベルで仮想通貨/暗号資産ビジネスを大きく変貌させる可能性があります。今後、実際に、各国及び各業者がどのように対応していくのか、そして現実的なトラベルルール遵守の枠組みができるのか目が離せません。

 

(参考資料)

FATF “Public Statement on Virtual Assets and Related Providers”

https://www.fatf-gafi.org/publications/fatfrecommendations/documents/public-statement-virtual-assets.html

 

財務省「金融活動作業部会について」

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/customs_foreign_exchange/sub-foreign_exchange/proceedings/material/gai20190614/05.pdf

 

財務省国際局資料「FATF審査について」

https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/kondankai/shiryoh2501.pdf

 

FATF “The FATF Recommendations”

https://www.fatf-gafi.org/publications/fatfrecommendations/documents/fatf-recommendations.html

 

FATF ” Guidance for a Risk-Based Approach to Virtual Assets and Virtual Asset Service Providers”

https://www.fatf-gafi.org/publications/fatfrecommendations/documents/guidance-rba-virtual-assets.html

 

V20 ウエブサイト https://v20.io/

 

 

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執筆者

河合 健

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー  スタートアップから大手金融機関まで広くフィンテックに関連する各種のリーガルアドバイスを行っています。仮想通貨及びブロックチェーンに関して、特に多くの案件を取り扱うほか、仮想通貨業界団体の法律顧問を務め、また、行政機関の主催する勉強会や研究会の委員を務めるなど内外の公的機関等への政策アドバイスにも積極的に取り組んでいます。

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