保存版!税制のプロが教える暗号資産取引に係る所得税の概論

暗号資産取引によって生じた所得には税金がかかり、一定以上の所得がある場合は確定申告をして納税する必要があります。2019年など上昇傾向が見られる市場では、取引で利益が出て確定申告の必要性を感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は暗号資産の売買で発生した所得に関する税金・確定申告の概要を解説します。また、所得が確定する年末までに税金について気にしておいた方が良い理由についても解説します。
暗号資産取引による所得は雑所得に区分される
暗号資産の取引によって生じた所得は、原則として雑所得に区分されます。インターネットオークションでの販売利益や年金なども該当する雑所得は、次のような特徴を持っています。
- 給与所得やその他の所得がある場合は、合算されたのち課税される総合課税
- 所得が増えるほど税率が高くなる、最大55%(住民税・復興特別所得税を含む)の累進課税
- 損失を翌年以降に繰り越しできない
-
損失が出たときに、他の所得区分の所得と通算できない(ただし、雑所得内でのほかの所得との通算は可能)
(国税庁HPより)
納税のためには会社員であっても確定申告という手続きが必要
会社員などの給与所得者の場合は毎月の給与から所得税が源泉徴収されており、年末調整によって年間の税額の過不足分を精算するので、多くの方は確定申告の必要がありません。しかし、給与所得以外の所得は基本的には源泉徴収されないため、暗号資産取引などその他の所得がある場合は確定申告をして自分で納税しなければなりません。暗号資産より多くの方が取引をされていると考えられる株取引については、源泉分離課税を選択することができるため、確定申告の必要がないことが多いのですが、暗号資産取引についてはそのような仕組みはまだありません。具体的には取引によって発生した所得が年間20万円以上あるときに、確定申告が必要になる可能性があります。この時、20万円以上の「所得」とは収入から経費を差し引いたものを指すことに注意が必要です。
暗号資産でいくら損益が出ているのかを正確に計算する
それでは次に、いくらの損益(利益又は損失)が出ているのかの計算方法についてみていきましょう。暗号資産の確定申告における最も複雑なポイントの1つが損益計算になります。
暗号資産取引による損益の計算方法
暗号資産の損益計算を最もシンプルに表すと「売却価額ー取得単価×売却数量」ということになります。
例えば、時価100万円で購入した1ビットコインを時価150万円の時に売却したとすると、50万円の利益が出ているということになります。
一見簡単そうに見えますが、必ずしも一度に購入した数量と同じ分を売却するとは限りません。具体的には、2度に分けて違う時価で購入した暗号資産を売却するような場合に、別途「取得価額」を計算しなければなりません。
暗号資産の取得価額の計算方法では、移動平均法と総平均法という2種類の計算方法が認められており、どちらかの計算方法を選択して確定申告をすることとなります。
移動平均法:暗号資産の購入をするたびに、通貨の取得価額を計算する方法。特徴として、計算が比較的複雑ですが、体感に即した計算結果になる。
総平均法:期間内全体(1月1日~12月31日)の合計の購入金額を購入した数量で割った平均額を取得価額とする方法。特徴として、移動平均法と比べると取得価額を計算するのは通貨ごとに1回のみなので、比較的簡易に計算することが可能。しかし、1回の購入でも取得価額に影響を及ぼすために損益の動きが激しいのも特徴で、また体感から大きく乖離した計算結果になることもあります。
多くの場合において計算結果は単年度では異なりますが、将来にわたって生じる所得金額は全ての暗号資産を売り切った時点で一致します。
暗号資産の損益計算方法については、確定申告期日までに税務署に届け出する必要があり、届け出がない場合には強制的に総平均法となります。計算方法は一度選択すると3年間変更することができないため、年度によって所得額が少ない計算方法を選択して確定申告をするといったことはできません。最初の選択時の判断が重要になります。
暗号資産の損益計算ソフトを利用すると簡単に計算できる
ここまでお読みいただければ、暗号資産取引で発生する損益の計算がとても複雑なものであることがおわかりいただけたかと思います。計算ロジックを理解していたとしても、実際にエクセルなどの表計算のみで計算をすることはとても難しいのが現状です。しかし、Aerial Partners(エアリアル・パートナーズ)でも提供しているGtax(ジータックス)などの損益計算ソフトを利用すれば、何も考えずとも簡単に計算を完了することが可能です。移動平均法・総平均法両方の計算が可能ですし、暗号資産同士の交換における損益計算や、ハードフォークなど特殊な取引の計算についても簡単に自動で行うことができます。
経費として認められる可能性のあるもの
計算ソフトなどを用いて損益計算をしたら、経費を計算し所得を確定させましょう。経費は、収入から差し引くことができるもの(差し引かれたものを所得と呼ぶ)です。暗号資産の取引を行うために支払ったものに関しては経費として認められ、収入から差し引くことが認められています。暗号資産取引による所得(雑所得)は所得額が増えるほど税率が高くなる累進課税であるため、所得額を低くすることができれば、税負担を軽くできる可能性があります。
暗号資産取引をする際、経費として認められる可能性のあるものとして、セミナー代やセミナーに参加するのにかかった交通費や宿泊費、暗号資産取引に使用するパソコンなどの設備費などが挙げられます。経費として認められる範囲については税務的な専門知識が必要になることから、何を経費として計上することが可能かなどについては税理士に相談しましょう。
確定申告について年内にできること
暗号資産に関わる税金・確定申告については、まだ所得が確定していない年末までに考えておくことをおすすめします。暗号資産に関わる税金について、年内に気にした方が良い理由について解説します。
取引履歴のバックアップをする
まず、暗号資産の損益計算に関しては、いつ何の通貨をどれだけの数量取引したのかという取引履歴の整理が最も重要になります。取引履歴は多くの場合、取引されている取引所内で取得することが可能です。
ここで注意しなければいけないのが、暗号資産取引所の中には直近の3ヶ月間しか履歴が取得できないところや、取引所の突然の閉鎖により履歴の取得が不可能になってしまうというケースが存在します。履歴が1つでも欠けていると、正確な損益計算を実施することは大変難しくなります。なので、確定申告シーズンでなくとも、履歴の定期的な取得は必ず行うようにしましょう。
また2019年度の確定申告より、仮に履歴が取れないなどで暗号資産の取得価額がわからない場合などに、取得価額を売却価額の100分の5として雑所得の金額を計算することが認められています。実際の取得原価が100分の5未満の仮想通貨であっても、取得価額を100分の5として申告することが認められます。
年末の計算で損益を調整する
年末の損益確定前に損益計算をしておくことことで、税額を圧縮できる可能性があります。暗号資産の損益計算とは実現損益(既に発生している損益)の計算のことをさしますが、含み損益(まだ実現されていない損益)を正確に把握することで、実現損益を調整することが可能です。
例えば、1,000万円の実現損益が出ていたとして、購入して保有している通貨の時価が下がっていて含み損を800万円抱えていたとします。この含み損を実現するための取引を正確に行うことでマイナス800万円の損益を実現し、実現損益を200万円まで圧縮することができます。
また、これは損失が出ている場合においても重要な話です。雑所得の性質上、取引における損失は翌年以降に繰り延べることができないため、年をまたぐ際の実現された損失は無駄な損失と言えます。このような場合でも、含み益を実現させることにより損益を0に近づけて、翌年以降の所得を相対的に低くすることも可能です。
これらの調整をするためには、年内の正確な損益計算が必須となります。これまでの暗号資産取引を網羅的に整理し、損益計算ソフトで正確な計算を行い、実現損益・含み損益がいくらなのかを正確に把握するようにしましょう。一度損益計算ソフトに履歴をアップロードすれば履歴のバックアップにもつながり一石二鳥です。
暗号資産に関する確定申告は複雑ですが、国税庁も暗号資産取引に関する税務調査に本腰をいれていますので、しっかりと税金・確定申告について理解し、確定申告に臨みましょう。
参考
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm
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QUOINE株式会社
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執筆者
沼澤 健人
株式会社Aerial Partners代表 仮想通貨に係る会計・税務サポート事業を手がける。仮想通貨税務に関する実務的知見を活かし、一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA) 税制検討部会長、一般社団法人 日本仮想通貨税務協会(JCTA)理事を務める。 HP : https://www.aerial-p.com Gtax: https://crypto-city.net