仮想通貨法を理解しよう。資金決済法などの法律についてやさしく解説
仮想通貨を安心して運用していくためには、法律で仮想通貨をどう扱っているかを知っている必要があります。しかし、上級者向けのイメージが強い仮想通貨に更に法律が組み合わさると、初心者には理解が困難なのではないかと思い、よく分からないままにしてしまっている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では
1 仮想通貨に関する法律
2 その中でも重要な資金決済法
3 世界の仮想通貨の法整備
について、わかりやすく解説をしていきます。
(※今回の記事の情報は2018年1月時点のものです。)
1 仮想通貨の法律を知りたい
この記事を読んでいる方々は、すでに仮想通貨取引を行われている方が多いと思います。
ビットコインをはじめとする仮想通貨は、日本でもここ数年で取引が急激に活発になってきました。
それを受けて2017年の4月に、仮想通貨交換業者を取り締まる「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案要綱」(いわゆる仮想通貨法)が施行されました。
この法律では「銀行法の一部改正」や「電子記録債権法の一部改正」などが定められています。
その中でも特に「資金決済に関する法律の一部改正」にあたる部分が通称「仮想通貨法」です。
仮想通貨法においては仮想通貨の定義や登録制の導入、業務に関する規定の整備などが明記されています。
以下、詳しく解説していきます。
1.1 仮想通貨法?ビットコインに関する法律とは
仮想通貨法と呼ばれる法律は、その名の通りビットコインなどの仮想通貨に関する法律です。
仮想通貨法では仮想通貨について正式に定義がされており、「仮想通貨自体が価格変動した際に発生する利益へ課税されること」や「取引所は国への登録が義務付けられること」などが定められています。
これまで明確に定義されていなかったビットコインも、仮想通貨法によって「モノやサービスの対価として支払いに使えること」「法定通貨と交換できること」の2つの要素を備えていることから、正式に仮想通貨であると認められました。
1.2 仮想通貨に関する法律が制定された理由と目的
仮想通貨に関する法律は、利用者の保護と、マネーロンダリングやテロの資金流入などの不正なお金の流れを防止する目的で制定されました。
そのため、取引所は先述の通り国への登録を義務とし、
・利用者の保護
・1,000万円以上の資本金
・資金の厳格な管理
などの要件を満たさない限り、国への登録は認めないものとされています。
この法律が制定された大きなきっかけは、2014年に当時最大の取引所「マウントゴックス」が破産した事件にあります。破産のきっかけとなったハッキング時に、利用者全てのビットコインが消失してしまいました。マウントゴックス社の事例を教訓として、取引所は利用者保護のために顧客資産を分別して管理することなどが求められています。
また、仮想通貨はその匿名性ゆえにマネーロンダリング(資金洗浄)やテロ組織の資金流入にも使われています。
仮想通貨法は、そういった犯罪への仮想通貨の活用を防止することも目的のひとつとしています。
2 資金決済法について
仮想通貨を売買するうえで特に知っておくべき法律が、「資金決済に関する法律」(資金決済法)です。
この資金決済法は改定され、仮想通貨についての項目「第三章の二 仮想通貨」が追加されました。
ここでは改定によって、仮想通貨の取り扱いにどのような変更があったのかご説明します。
2.1 仮想通貨に関わる改正資金決済法
2017年4月1日、改正資金決済法が施行されました。
この法律は仮想通貨の取引業者を規制するもので、仮想通貨が「通貨」であると定義された点や、取引所は国に登録する義務が課された点に大きな変更が見られます。
では、改正前はどのような状況だったのでしょうか。
2.2 これまでの資金決済法
資金決済法が改正されるまでは、法律上仮想通貨そのものが「モノ」や「サービス」とみなされていたため、ビットコインなどの仮想通貨には8%の消費税が課税されていました。
例えば、100万円分の仮想通貨を買おうとした時に、これまでは8%の消費税がかかるので108万円支払う必要がありました。そのビットコインで何かを購入した場合にはさらに8%の消費税がかかります。これは「二重課税」状態のため、回避・調整されるべきものです。
また、取引所に対しての規制が無かったため、取引所による利用者の保護が法的に求められていませんでした。
2.3 資金決済法の改正で何が変わったの?
資金決済法の改正によって、具体的には
・仮想通貨が「通貨」であると定義された
・仮想通貨交換業者に登録制が導入された
・利用者保護のためのルールが整備された
といった変更がされました。
中でも仮想通貨が通貨であると定義されたことの影響は大きく、これまで「モノ」や「サービス」として扱われていた仮想通貨が、法的に「支払い手段」として扱われることになりました。
2.4 仮想通貨も消費税が非課税になった
現在、仮想通貨の売買取引は消費税が非課税となっています。
これは、法律上で仮想通貨がプリペイドカードや商品券などと同じように「支払い手段」として扱われるためです。
ただし、仮想通貨に対して投資や投機を行っていた場合の価格上昇による利益は雑所得として他の所得と合算されることに注意が必要です。
3 世界の仮想通貨の法整備
ここまでは日本の法律についてご説明してきました。
今後、ある国で仮想通貨の取り締まりが強化された場合には、相場に大きな影響をもたらし、損益に大きく影響する可能性があります。仮想通貨がどうなっていくかをより深く考えるには、世界の動きを知ることが重要です。
ここからは、世界各国では仮想通貨に関連する法整備がどのようにされているのかを、アメリカ、中国、韓国、ロシアの4カ国における
1 仮想通貨全般の規制
2 マイニングの規制
3 ICOの規制
に関する法律を例に、順番に紹介していきます。
3.1 仮想通貨全般の規制
この段落では、アメリカ、中国、韓国、ロシアのそれぞれの国で仮想通貨がどのような規制を受けているのかご紹介します。
3.1.1 アメリカの場合
アメリカでは、仮想通貨関連の企業や取引所は「銀行業」として扱われています。
そのため、仮想通貨の取引所や個人は米国財務省の管轄に置かれることとなります。
2017年にはアメリカ連邦準備銀行(FRB)のイベントにおいて、ビットコイン事業を行うための国家免許プログラムの施工が模索されていると発表されています。
また、ニューヨーク州はすでに州法としてビットコイン事業者向けに「BitLicence」というビットコイン事業用のライセンスを導入しています。
ただし、このラインセンスを取得するためにかかるコストが大きいため、ニューヨーク州の取引所や企業からは懸念される声が高まっています。
3.1.2 中国の場合
中国では仮想通貨がもとになった詐欺などの犯罪が多く、仮想通貨の問題が顕在化していました。そのため、中国政府による規制が厳しく、仮想通貨から人民元への交換が禁止されていて、事実上仮想通貨の取引が規制されています。
3.1.3 韓国の場合
韓国では、かねてより法務省が取引所の閉鎖に向けて動いています。
2017年末にはすでに、本人確認が未完了の口座が凍結され、新規口座の開設が一時停止されました。
韓国の法務大臣は、2018年の新年記者会見の場で「現在、取引所の操業を禁じる法案の準備を進めている」と述べています。
今後はより一層厳しい規制がかかるのではと考えられます。
3.1.4 ロシアの場合
マイニングが活発なロシアでは、2017年10月にプーチン大統領の署名付きで、仮想通貨に関する規制ガイドラインを発表しました。仮想通貨を規制することで、仮想通貨の犯罪への利用を少なくするのが狙いです。
3.2 マイニングの規制
仮想通貨の発展には欠かすことのできないマイニングですが、世界中ですでに多くの企業が「事業」としてこのマイニングにリソースを投じています。
それぞれの国で、マイニングにどういった規制がなされているのかご説明します。
3.2.1 アメリカの場合
アメリカではマイニングは禁止されてはいません。州によってはむしろ推奨している州もあり、マイニング事業に助成金がでることもあります。
3.2.2 中国の場合
中国では、安い電力に目を付けて、多くのマイニング事業会社が中国でマイニングを行っていました。それによって、多くの電力が消費されてしまい、問題となっていました。中国政府は、これを受けて、2018年1月10日に中国国内でのマイニング事業の停止を決めています。
そのため、中国のマイニング事業者は撤退を余儀なくされています。
3.2.3 韓国の場合
韓国ではマイニングそのものは規制されていません。
しかし、法務省が取引所の閉鎖に向けて動いていることから、今後マイニングも禁止されるのではとの見方も強い状況です。
3.2.4 ロシアの場合
ロシアでは、誰もが自由にマイニングを行うことは認められていません。
マイニング業を営む場合には、開業申請をする義務が課せられています。
また、マイニングした仮想通貨には税金がかかります。
資源が豊富で電気代が安価なロシアには、国外から多くのマイニング業者が移転してきています。
そのため、ロシアでは、国内外のマイナーがマイニングを「事業」として行えるような法整備がなされています。
3.3 ICO(Initial Coin Offering)の規制
ICO(Initial Coin Offering)は仮想通貨トークンを発行することで行う、新しい資金調達の方法です。
発行したトークンを投資家に売却することにより、資金を得ることができます。
株式を用いた資金調達とよく似ているので、それぞれの国でどのような規制がなされるのか注目を集めています。
3.3.1 アメリカの場合
アメリカではICOの法規制がなされていますが、あくまで詐欺などを防ぐための規制であり、禁止されているわけではありません。
3.3.2 中国の場合
中国政府はすべてのICOを禁止しています。仮想通貨への規制が厳しい中国ですが、匿名性の高いICOを禁止することで、テロリストへの資金流入やマネーロンダリングを防止する狙いがあります。
3.3.3 韓国の場合
韓国政府はすべてのICOを禁止することを発表しています。
ICOの禁止によって、投資家を詐欺から保護することやテロリストの資金調達に使われることを防止する狙いがあります。
3.3.4 ロシアの場合
ロシア政府はICOを有価証券として扱うように規制を進めています。
有価証券とは、商品券や株券などのようにそれを持っている人の財産権を証明する証書です。
ロシアでは新しい法律を作成するのではなく、既存の法律の中での規制を目指して動いています。
4 【まとめ】仮想通貨に投資するなら法律は理解しておきましょう
より安全に、より上手に仮想通貨への投資を行うためには、法律の理解が必要不可欠です。法律を理解しておくことで罰則を免れることができるだけでなく、通貨の値上がりや値下がりのタイミングを見極めることもできます。
仮想通貨の法律は分かりにくいところもありますが、
「仮想通貨と税金はどのような関係があるのだろう?」
といったようにポイントを抑えて動向を追うと分かりやすいのではないでしょうか。
国内での法規制はもちろんのこと、日本以外の国でどのような仮想通貨規制が行われているのか知ることも重要です。規制のひとつで仮想通貨の相場は変動します。世界の仮想通貨ニュースにも目を通しておくようにしましょう。
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執筆者
Liquid編集部
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