イーサリアムのハードフォークアップデートの種類や特徴
時価総額第2位であるイーサリアムは、「EIP(Ethereum Improvement Proposals:イーサリアム改善案)」にもとづき、4段階のアップデートが行われる予定です。この4つはそれぞれフロンティア、ホームステッド、メトロポリス、セレニティと名付けられ、いずれの段階でもハードフォークが行われるとされています。
今回は、イーサリアムがこれまでに行ってきたアップデートや、これから行われるアップデートの特徴について解説します。
1 イーサリアムのアップデートとは?
イーサリアムは、ブロックチェーンを応用した新技術を追求する「イーサリアムプロジェクト」が提供するプラットフォームの総称です。
イーサリアムプロジェクトでは、仮想通貨イーサリアムと、イーサリアムが持つスマートコントラクトを用いて、今よりも便利な社会を実現させることを目的としています。
スマートコントラクトを利用することで、ブロックチェーンを利用して契約の締結から実行までが自動で行えるようになります。イーサリアムがビットコインに次ぐ時価総額2位の地位を保っているのも、スマートコントラクトに世界中の投資家や企業、金融機関が注目しているためでしょう。
しかし、イーサリアムは完全な状態でリリースされているわけではありません。運用していくなかで起こりうる問題に対して、解決策を実行し、さらなる利便性を追求するためにハードフォークによる4段階のアップデートが予定されています。
このアップデートは、EIPの提案にもとづき行われ、開発フェーズによってフロンティア、ホームステッド、メトロポリス、セレニティと名付けられています。
2 ハードフォークについて
ハードフォークとは、アップデートの一種です。
ブロックチェーンのアップデートには、ソフトフォークとハードフォークの2種類があります。ソフトフォークでは、ブロックチェーンに記録されているこれまでの取引すべてにおいて、アップデート後の新技術を適用することができます。
一方、ハードフォークでは、アップデートを行った時点から新しい技術が適用されるため、過去の取引については適用されません。
ハードフォークによるアップデートは、技術の改善や仕様の変更を目的として行われ、新しいルールが適用されると、ハードフォーク前の旧ルールとの互換性がなくなるのが特徴です。
さらに、ハードフォークには、純粋にブロックチェーンのアップデートを理由としたもの、コインの分裂をともなうもの、アルトコイン生成のために行われるものの3つがあります。
コインの分裂をともなうハードフォークとして有名なのが、ビットコインからビットコインキャッシュが生まれたハードフォークです。これは、ビットコインのアップデートについて参加ユーザーの意見が割れてしまったことから起こりました。
しかし、イーサリアムのEIPにもとづく4段階のアップデートによるハードフォークは、参加者による賛同を得て行われることから、コインの分裂は起きません。純粋にイーサリアムにある課題を改善するために行われるハードフォークです。
3 イーサリアムのアップデートの種類や特徴
ここからは、EIPにもとづく4段階のアップデートはこれまでにどこまで進んでいるのか、これからどのようなアップデートが行われるのか詳しくみていきます。
3.1 第1回アップデート:フロンティアについて
2015年7月、イーサリアムの第1回アップデート「フロンティア」が実行されました。これはイーサリアムの開発者や技術者向けのテスト版として公開されたプラットフォームであり、イーサリアムの基本機能を実験する場として公開されていました。
イーサリアムのプラットフォームが正常に機能するか、バグは起きないか、大きな問題が出ないかを試す、いわゆるβ版としてリリースされたものです。
3.2 第2回アップデート:ホームステッドについて
2016年3月、2回目のアップデートホームステッドが行われました。ここでは、実際に多くの人がイーサリアムを利用できるように機能を改善しています。主に採掘(マイニング)の難易度調整や、取引手数料の変更といった基本的な取引部分についての機能修正が行われました。
3.3 第3回アップデート:メトロポリスについて
2017年10月に行われた3回目のアップデートであるメトロポリスは、さらに2段階に分けられました。それぞれ「ビザンチウム」、「コンスタンティノープル」と名付けられています。
ビザンチウムでは、ブロックの承認をPoW(Proof of work:プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(Proof of stake:プルーフ・オブ・ステーク)へと変更するための準備、取引における匿名性の強化などが行われました。
現在、その次の段階であるコンスタンティノープルが実行に至らず、延期されている状態です。本来、2017年の末に行われるはずだったコンスタンティノープルですが、いまだいつ実行されるのかはわかっていません。2018年内には完了するといわれていますが、正確な時期については不明です。
3.4 第4回アップデート:セレニティについて
イーサリアムは、4段階目のアップデート、セレニティによって最終段階を迎えます。このアップデートがいつ行われるのか、どのような内容で行われるのかはまだ公開されていません。
ただ、このアップデートによって、イーサリアムはPoWからPoSへ変更されるといわれています。
4 イーサリアムの今後について
このように、イーサリアムのアップデートは現在、第3段階のメトロポリスの途中で止まっている状況です。メトロポリスが完了し、第4段階のセレニティへと進化することで、イーサリアムには大きな革命が起こると考えられます。
特に注目されるのは、価格への影響です。
イーサリアムの価格は、その他の仮想通貨とは異なり、予想しにくいといわれています。メトロポリス完了後の価格は期待値から上昇する見込みがありますが、これは本来の予定どおりにメトロポリスが完了していた場合の話です。メトロポリスの完了を長い間待たされているユーザーの間には、開発側に対する不信感が募っている可能性もあります。
「本当にセレニティによる進化を迎えることができるのかわからない」という不安感が、イーサリアムの価格上昇を妨げることも考えられます。現段階では、メトロポリスによって価格が上昇する見込みはあっても、楽観視はできない状況といえるでしょう。
最終的にセレニティへと進化できた際にも、イーサリアムの価格は上昇する可能性が高いと考えられます。
セレニティによってもたらされるPoSは、PoWとは異なり「通貨を多く保有している人が取引承認による報酬を得やすい」システムとなります。コインを多く保有していればしているほど有利になるため、多くの人がこぞってコインを買い集める可能性があります。それによって、イーサリアムの価値は上がっていくでしょう。
しかし一方で、貧富の差が広がってしまう可能性も出てきます。
セレニティによってイーサリアムがどのようなシステムになるのか、詳細な内容はまだ発表されていません。今後、イーサリアムがどのようなハードフォークを行っていくのか、注目しておく必要があります。
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執筆者
Liquid編集部
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