ライトニングネットワークとは?基本情報から仕組みや技術まで徹底紹介

ビットコインの取引はブロックチェーン上で行われるのが通常ですが、「ライトニングネットワーク」を活用すると、第三者を経由しても安全にビットコインを送金することが可能です。
ここでは、ライトニングネットワークの概要をはじめ、システムを支える技術や、ライトニングネットワークを活用するメリット、問題点などを解説します。
1 ライトニングネットワークとは?
「ライトニングネットワーク」とは、ペイメントチャネルやオフチェーンなどと呼ばれる、ブロックチェーンの外にある経路で行われる決済ネットワークのことです。
仮想通貨での取引において幾度にも重なるトランザクションは、すべてブロックチェーン上に記録されます。
しかし、ペイメントチャネルで取引を完了させた場合、取引のトランザクションは省略され、取引の最終結果のみをブロックチェーンに記録することが可能です。
たとえば、AがBにビットコインを送金する取引を行ったとします。
0.1BTCを10回に分けて送った場合、通常の取引では0.1BTCを送金した取引履歴が10回分ブロックチェーンに記録されますが、ペイメントチャネルを利用すると、ブロックチェーンには最終結果である1BTCを送金した記録だけが残されます。
ペイメントチャネルは、ユーザーが取引を行う度に開設しなければならないのがデメリットとして考えられてきました。
そこで、ペイメントチャネルを開設していないユーザー同士でも、ペイメントチャネルでつながった第三者を介することで取引が行えるよう開発されたのが、「ライトニングネットワーク」です。
ライトニングネットワークを活用してAがCにビットコインを送金する場合、AとCがペイメントチャネルでつながっている必要はありません。
間にいるBが両者とペイメントチャネルでつながっていれば、AはBを経由して送金することができます。
2 ライトニングネットワークを支える仕組みや技術
前述したように、ライトニングネットワークを活用すると、ブロックチェーン上のトランザクションを軽減したり、不特定多数のユーザーを経由した仮想通貨の送金をしたりすることが可能となります。
ライトニングネットワークでは第三者を経由して取引を行うため、より高いセキュリティが求められます。
このシステムを支えているのが、ここで解説する「マルチシグアドレス」と「HTLC」です。
2.1 マルチシグアドレス
「マルチシグアドレス」とは、複数のユーザーによる秘密鍵によって仮想通貨を管理するシステムのことです。
通常、仮想通貨の秘密鍵は、ひとつの端末やパスワードによって管理されています。
しかし、管理しているパソコンやスマートフォン、タブレットなどがウイルスに感染してしまったり、パスワードの流出や紛失が起きてしまったりすると、仮想通貨が盗難されてしまうリスクがあります。
そこで、複数の署名によって認証されなければ取引処理が行われないよう、マルチシグアドレスが活用されているのです。
2.2 HTLC
「HTLC」とは、「Hashed Timelock Contracts:ハッシュドタイムロックコントラクツ」の略称で、「ハッシュ」と「タイムロック」の技術を意味しています。
ハッシュとは、ハッシュ関数とも呼ばれ、情報を暗号化できる技術のことです。
取引履歴や送金記録などさまざまなデータをハッシュ関数によって暗号化し、情報の安全性を保ったり、データの改ざんを防いだりする役割を担っています。
数値化されたハッシュ値は誰でも確認することができますが、その数値から元のデータを復元することは極めて難易度が高いとされています。
さらに、元のデータがわずかでも異なれば、ひとつとして同じハッシュ値は算出されません。
タイムロックとは、設定した時間までトランザクションを行うことができない技術のことです。
このふたつを活用すると、ライトニングネットワークの安全性がぐっと高まります。
たとえば、AがBを経由してCにビットコインを送金する場合、経由するBに悪意があれば、ビットコインを持ち逃げされてしまうリスクがあります。
しかし、HTLCを活用して送金を行うと、A・B間でBがビットコインを取り出すためには、Bの署名に加えてCのみが知る秘密鍵が必要となるため、ビットコインを取り出すことはできません。
また、万が一、Cが何らかの事情によりビットコインを取り出さなかった場合、通常Aから送金されたビットコインは取引の途中で宙づりになってしまいます。
しかし、タイムロックによって時間を設定しておくことで、一定の時間が経過すればCの秘密鍵がなくてもビットコインを取り出すことが可能となります。
その場合は、A・B間ではAに、そしてB・C間ではBに取り出す権利があります。ただし、A・Bに設定するタイムロックによって状況は異なります。
3 ライトニングネットワークのメリット
これまで解説したとおり、マルチシグアドレスやHTLCの技術を活用し、直接ペイメントチャネルでつながっていないユーザーとも第三者を経由して取引を行うことができるライトニングネットワークは、その安全性の高さが大きなメリットでもあるでしょう。
しかし、それだけではなく、ライトニングネットワークには「マイクロペイメント(少額決済)の実現」「スケーラビリティ問題の解決」というふたつのメリットがあります。
3.1マイクロペイメント(少額決済)の実現
「マイクロペイメント」とは、「マイクロ(micro)」という言葉が意味するように、1,000分の1単位の支払いのことです。
1,000分の1ドル程の小額単位でも支払いが可能なシステムの総称として使用されています。
たとえば、仮想通貨で決済や送金など取引を行う際には、採掘(マイニング)を行うマイナーに対する手数料が発生します。
取引の度に手数料が発生するため、支払金額によっては手数料の方が高額になってしまうことから、ビットコインはマイクロペイメントに適していないと考えられてきました。
しかし、ライトニングネットワークで取引を行うことで、ブロックチェーン上で発生する手数料は、取引の最終時のみとなります。したがって、手数料を気にせずにマイクロペイメントを行うことが可能となるのです。
3.2スケーラビリティ問題の解決
「スケーラビリティ」とは、IT業界で使用される用語で、システムやネットワークが適応できる処理能力のことです。
2018年4月のビットコインの時価総額は、日本円にして16兆円を超えています。つまり、それだけ多くのユーザーから注目されている仮想通貨であり、今後も頻繁に取引が行われると予想されます。
しかし、ビットコインの取引数が増大して処理能力を上回った場合、処理速度の低下につながるだけでなく、取引の承認が間に合わず未承認取引の増加が引き起こされる可能性もあるのです。
このリスクは、スケーラビリティ問題としてビットコインをはじめとする仮想通貨取引の課題でもあります。
そこで、ブロックチェーン外のペイメントチャネルを活用したライトニングネットワークで取引を行うことで、ブロックチェーン上の取引量が減少し、スケーラビリティ問題の解決につながるのではないかと注目が高まっています。
現在、ビットコインの取引では1MBの取引処理に約10分かかります。
しかし、取引が増えて未承認の取引が詰まっていることから、取引の内容によっては、承認に数日を要することもあり、大きな問題となっています。
わずか1秒間に数千~数万もの取引処理を行うことのできるライトニングネットワークは、スケーラビリティ問題を解決し、取引処理能力の向上に大きく貢献するでしょう。
4 ライトニングネットワークの問題点
これまで解説したように、いくつものメリットが魅力のライトニングネットワークですが、同時に問題点も存在します。
4.1マイナーの手数料が減る
ブロックチェーン上でマイニングを行っているマイナーには、取引が行われる際の手数料が報酬として支払われます。
しかし、ライトニングネットワークの活用によりブロックチェーン上での取引が減ると、マイナーが得る報酬も減ってしまいます。するとマイナーの数も減り、ブロックチェーンの取引処理能力の低下につながると懸念されています。
4.2中央集権組織が生まれる可能性がある
前述したように、ライトニングネットワークでは第三者を経由して取引を行うことが可能です。
しかし、取引の仲介役として取引の間に入るユーザーは、ライトニングネットワーク上にデポジットを預ける必要があります。
複数のペイメントチャネルを開設しているユーザーほど、ほかのユーザー間取引の仲介役になる可能性が高くなりますが、個人のユーザーが多額のデポジットを預けることは難しいでしょう。
すると、多くの資金を持つ企業が仲介役となって銀行の役目を担い、中央集権が生まれる可能性もあります。
4.3ホットウォレットのリスクに注意する必要がある
ライトニングネットワークを活用すると、常に何らかの取引を行うことになるため、絶えずネットワークに接続していなくてはなりません。
常にインターネットにつながっているウォレットのことをホットウォレットといいますが、手軽に仮想通貨を引き出すことができる反面、ハッキング被害に遭うリスクが高まります。
4.4新たなスケーラビリティ問題につながる
ライトニングネットワークを活用することで、ブロックチェーン上の取引量が減り、スケーラビリティ問題の解決につながるメリットがあります。
しかし、ライトニングネットワークでの取引が増えると、ペイメントチャネルの開設量も増えるため、取引処理が重くなり、新たなスケーラビリティ問題が発生する可能性があります。
このブログを定期購読する
ブログを定期購読して、
最新情報をチェックしましょう。
執筆者
Liquid編集部
Liquidに関する様々な情報をお知らせします。