仮想通貨のロックアップとは?過去の事例や将来性

仮想通貨のロックアップとは、特定の企業(団体)が発行した仮想通貨のうち、一定の量を一定期間売りに出さずに凍結することです。
過去には仮想通貨リップル(XRP)を発行しているリップル社が、全体の55%にあたるXRPを一定期間ロックアップすることを発表し、話題となりました。
この記事では、仮想通貨のロックアップについて、ロックアップが実施される背景や過去の事例、安全性などを詳しく解説していきます。
1 ロックアップとは?
仮想通貨のロックアップとは、発行元である企業が、一定の期間のあいだ、一定の量のコインを凍結し、売却しないと約束することをいいます。
もともと「ロックアップ」は株式市場で使われる言葉で、企業が株式を新規公開する場合に、公開前から株式を多く保有している株主(その企業の社長や役員、ベンチャーキャピタル、親会社など)が、持ち株を一定期間売却できないように決める取り決めのことです。
株式市場でロックアップをするのは、上場直後のまだ流通量が少ないときに大量の売却があると、売り圧力が強すぎて株価が大幅に下がる危険性があるためです。
ロックアップの内容や期間は、新規公開株(IPO)の案件ごとに異なり、公募と同時に公開される「新規発行並びに株式売出目論見書」で確認できます。
仮想通貨のロックアップも、これと同じです。ICO(Initial Coin Offering:新規仮想通貨公開)が行われる場合に、そのコインを大量に保有している企業などが公開直後にコインを放出すれば、価格が一気に暴落する危険性があります。
それを防ぐため、企業がICOを利用した資金調達を行い、仮想通貨が発行される場合には、ロックアップをユーザーに約束するのです。
また、新規上場のタイミング以外にロックアップが発表されることもあります。
例えば、ロックアップの事例として有名なリップル(XRP)がそのケースに該当します。
リップルは、発行元であるリップル社が半数以上のXRPを保有していたため、リップル保有ユーザーのあいだで「リップル社が保有している大量のXRPが放出されたら、XRPの市場価格が暴落するのでは」という懸念が広がっていました。
それを払拭するために、リップル社はロックアップを発表します。ロックアップが行われたことで、投資家は市場の動きを判断しやすくなり、より安定した通貨とされました。
2 これまでに行われたロックアップの事例
2.1 リップルのロックアップ
ロックアップが行われた事例としてもっとも有名なのが、リップル(XRP)のロックアップです。
リップルは、1,000種類以上あるといわれている仮想通貨の中でも、2018年4月現在、時価総額3位を誇るアルトコインです。
ビットコインよりもかなりスピーディーに送金できるリップルネットワークや、今後国際的なブリッジ通貨として機能していくとされる将来性が評価され、とても人気の高い仮想通貨です。
リップル(XRP)のロックアップは、2017年5月に発表されました。
その背景には、当時リップル社が発行数の60%以上を保有しており、ユーザーがそのことを不安視していたことがあります。
発行された1,000億XRPのうち、リップル社は630億XRPを保有していました。
もし、リップル社が大量のXRPを市場に売りだせば、XRPの価格が暴落する可能性があります。
そんなユーザーの不安を払拭するために、リップル社は自社が持つ630億XRPのうち、550億XRP(約90%)をロックアップすると発表します。
リップル社は「XRPの総供給量の確実性を確保するため、550億XRPをエスクローに預託する」としました。
リップル社のロックアップにより、2017年末までXRP全体の55%が凍結されました。
そして、2018年以降は、55ヶ月にわたり、市場に放出できるのは毎月10億円までが上限と決められました。
ちなみに、ロックアップ以前の過去18ヶ月で、リップル社が市場に放出していたXRPは毎月平均で約3億XRPでした。
ロックアップの実装が完了したのは2017年12月で、その報告後にはXRPの価格が上がりました。
リップル社の大量放出の可能性がなくなり、投資家から「安心して投資できる」と判断された影響だといわれています。
2.2 ICO(トークンセール)時のロックアップ
企業が資金調達を行うために新しい仮想通貨(トークン)を発行するICOの時に、参加ユーザーの保護を目的としたロックアップが設定されるケースも増えています。
リップルの例と同じように、トークンセールを行う場合には発行元となる企業がトークンの大部分(3割~半数程度)を保有することがほとんどです。
そうすると、トークンセールが終わったあと、仮想通貨取引所に上場した際に企業がトークンを大量に売却すると暴落の危険性があります。
それらを防ぐため、またユーザーの安心感を高めて多くのユーザーにICOに参加してもらうために、ロックアップを発表するケースがあります。
3 今後のロックアップについて
ロックアップは、市場への大量放出で仮想通貨の価格が暴落する危険性をなくし、価格を安定させる、投資ユーザーにとって安心できる仕組みといえます。
しかし、ロックアップが本当に正しく行われるのか、解除される可能性はないのかなど、いくつかの不安も残ります。
3.1 ロックアップの安全性について
ロックアップがはたして正しく行われるのか、その安全性や信頼性は担保されているのかといったことが気になる場合は、ロックアップがどのような方法で行われるかを確認する必要があります。
例えば、リップル社が行ったXRPのロックアップでは、リップルネットワークの基盤である「XRP Ledger」の持つエスクロー機能を使ってロックアップが行われています。
まず、2017年末までは、リップル社が保有していた550億XRPが、暗号で保護されたエスクローアカウントに移行され、凍結されました。
その後は、XRP Ledgerのエスクロー機能を使い、毎月1日に凍結が有効期限切れになる10億XRPの契約を55件作成。こうすることで、毎月10億XRPまではリップル社が使用できるようになります。
特定の条件や期間が成立するまで解除や改ざんされないようになっている機能のため、発表どおりにロックアップが行われない危険性はありません。こうした機能を使用することによって、リップルはロックアップの安全性を高めています。
リップル以外のICO案件でのロックアップには、エスクローのマルチシグ署名者を確定して、そのエスクローアカウントへ一定数のコインを移動させる方法などがあります。
いずれのロックアップも、改ざんされない方法や公開監査できる状態で行われることがほとんどです。
3.2 ロックアップ解除の可能性について
新規公開株(IPO)においては、ロックアップの期限前に、ロックアップが解除される場合があります。
これは、公募価格の1.5倍を超えた場合、あらかじめ定めている期間内であっても、株式を売却できると特例で認められているためです。
これらの条件については「新規発行並びに株式売出目論見書」で明示されています。企業に投資しているベンチャーキャピタルに、こうした条件が設定されていることが多いです。
一方、仮想通貨のロックアップの場合、ロックアップ解除の可能性については、ロックアップを実施する企業の開示内容によります。
ただし、今までの仮想通貨のロックアップでは、IPOのような特例が設けられているケースはほとんどありません。
リップルの場合は、XRP Ledgerのエスクロー機能により、あらかじめ毎月10億XRPのみ凍結が解除されるように設定されています。
少しずつ解除されるように設定されているため、一気にXRPが市場に流れ出る危険性はありません。
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執筆者
Liquid編集部
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